暮らしと方言の色揚げ

内山一兄・郷田敏男

 
 
 
 
 
 
 

明月つぁん


実りの秋の収穫がそろそろはじまります。

初掘りの芋に栗やだごを供えます。

すすきや桔梗などの季節の草花も添えて、

縁側に並べます。

物干し台の三つ脚や屋根瓦の上に供げる所もあります。


「芋ン葉バ敷イテ 格好ン良カツカラ 一二、ウル年ャ 一三供ギョーッツロガ・・・」

「ソータノ 月ノシコ。升ニ入レテノヤ・・・」

「ソリカラ 栗テロン 団子・饅頭ンゴタットモ 作ッテ供ギョーッタタイ」。


升に芋を盛るのは、

お陰で升で量るようにたくさん芋が穫れましたと、

明月さんに見せて感謝をする意味なのです。


婆さんにまつわり付いていた裾孫は、昼間の疲れからかうとうとしはじめます。

婆さんは、そっと孫をおんぶして坪先に出ます。

真昼のように明るい坪で、例の子守唄を低い声で歌いながら躰をゆすります。

「マンマンシャンナ 幾ツ 十三、七ツ 七ツデヤヤ生ンデ

ソノヤヤ愛ラシカ 姉シャンニ オン抱カシュ」。


やや肌寒いので、縞や絣の長着物を羽織っています。

月の明かりが射し込む縁側で座布団に端座して月を賞でる姿は、

四季の風情のうちでも最も情緒が漂うものではないでしょうか。

 

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