暮らしと方言の色揚げ

内山一兄・郷田敏男

 
 
 
 
 
 
 

明月つぁん


「グースト初手ハ 明月ツァンノ晩ナ 子供ドンガ ヒナオラビシテ 芋貰イ サルキョーッタゲナノヤ」

「ソーゲナ。『明月ツァンニ 芋供ゲタノー』チューテ エゴツネ 貰ッサルキョーッタゲナ」。


明治の初めまではこの明月つぁんの晩には、

よそのなり果物をちぎって(果物を木からとる)も、

咎めないという慣習があったのです。

信仰のなせる業とは言え、

乞う者には惜しみなく恵み、

盗る者を咎めずと言う、

おおらかな時代であったのです。


切れ目なく車の流れが続く高層ビルの谷間から仰ぐ月は、

風情がないものです。

ネオンの巷から見上げる満月は、味気ないのです。

しかしながら、如何に喧噪の巷にあってもせわしかっても、

自然の移ろい、花烏風月にもしばし目を向ける心のゆとりが欲しいものです。

歩を緩めて流れる雲に目を移し、

並木の狭間からでも月を眺める潤いが欲しいのです。

 

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