暮らしと方言の色揚げ

内山一兄・郷田敏男

 
 
 
 
 
 
 

御願成就


 この日は座元(氏神の祭事その他を取り仕切る組織)と

次の年にこれを引き継ぐ講中(隣組)の全員が、祭事に参加をします。

祝詞奏上・玉ぐし奉奠など一応の神事が終わると、

最後に座を受ける家を決めるくじがあります。

和紙を小さく千切って、

それに次の講中の戸主の名を記入してお盆に入れるのです。

大宮司さんがやおら御幣を垂らしてお盆の上を静かに回します。

すると、あーら不思議、小さく折った和紙のケバ(毛羽)が御幣に付いて上がってくるのです。

「アジャー。ゴヘニ 紙ノヒッチータ。不思議ナヤ」

「ホンナコテ!!神サンノ付カシャッタッタイ」と目を見張るのです。

大宮司さんは付いてきた紙を確かめて、

「○○サン方ニ 当タリマシタ」と宣言します。

このくじに当たることを、「神サン(座)ノ 付カシャッタ」と言います。

十二月中旬に座を交替してから向こう一年間、

この家が施主となって講中協力し合い氏神への奉仕をするのです。

言うなれば、兵隊で言う上番下番の引き継ぎと言ったところでしょう。


「昔ャ 神サンノ付カッシャルト オ祝エマデシテ 喜ビョーッタバッテナヤ」

「ソータイ。今ハ ダッデン 口ニクサ 出サンバッテ 逃ルット ホットスルフーバイ」。

 

←前項  

八女方言歳時記へ戻る

 

次項→



ページの上段へ PAGE UP