暮らしと方言の色揚げ

内山一兄・郷田敏男

 
 
 
 
 
 
 

麦播きのころ1


「堀の泥揚ゲカ?ホンナコテ シルシカ仕事ジャッタナヤ・・・」

「タゴニ綱付ケテ ソリバ 両方カラ引ッ張ッテナイ」

「頭カラ 泥ウチ被ッテサイ マッデ 泥人形タイ。

痒カッタッチャ泥手デ ドコイラン 掻カレハセズ・・・」。

こうした泥まみれの作業が終わると、魚取りの楽しみが待っているのです。


泥水が底をつくと、鮒がバタバタ跳ねるのです。

どんこが石垣の奥に逃げ込みます。

どじょうが泥水にねりこむ(ぬかり込む)のです。

排水がすむとそろそろ堀に降りてみます。

泥土は、大人の膝までめり込みます。

跳ねている泥まみれの魚を、てどらめ(素手で)バケツに投げ入れます。

泥にねりこんでいるどじょうを探ります。

あまり夢中になってふと脛が痒いのに気が付くと、ひるが吸い付いているのです。

「アチャー。ビーッドンがスィーツィートルー!!」と、とんきょうな声が出ます。

堀の周りからどっと笑い声が弾けたものです。


「時ニヨッチャ バケツ一杯グレ 取リョッタナヤ」

「ソータイ。食ベキランモンバ 近辺ニ味噌漉シデ 配ッテサルキョッタガ・・・」

「コマカツァ ヒボカシショーッタタイ」「ソーソー。ヒボカシカ!?」。

竹の串刺しにて焼いて保存します。

このひぼかしがまた旨いのです。

大根の煮染の味出しや、何よりの弁当のおかずになります。

 

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