暮らしと方言の色揚げ

内山一兄・郷田敏男

 
 
 
 
 
 
 

麦播きのころ2


時には厩肥をかき出します。尻掃除です。

坪先につながれた馬に、主が馬の尻べんぷを軽くたたいて子供を馬の背に支え上げます。

馬はじっと待っています。こうして子供も、裸馬に乗ることを覚えていくのです。

ときには、馬をしばらく原っぱに連れ出します。

世話をしていると、子供でも扱いが上手になるものです。

馬は目を細めておとなしく従いてきます。

久し振りに広場に開放されてのんびり草を食べます。

人馬一体、家族の一員、家族同様にむぞがられ(かわいがられ)ていたのです。


ではここで、麦播きの件に話をもどします。

そうそう、秋の田すきに馬が登場する前に株切りがあっていました。

確か、終戦後まで続いていたようです。

稲の大敵螟虫は、株の近くで蛹になって越冬します。

それで、田すきの前には必ず株切りをしていました。

見た目にはサクッサクッとリズミカルな調子で切っていき、

鼻歌まじりでよかりそうなものですが、これがまたなかなか要領が要るのです。

広い田圃をひねもす株切り−一幅の絵になりそうですが退屈な仕事でした。

日が短い霜月の中旬でも、昼からのお茶が待ち長かったのです。

 

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