暮らしと方言の色揚げ

内山一兄・郷田敏男

 
 
 
 
 
 
 

麦播きのころ3


馬にも受難の日がありました。

年に一回、○○の広場で駄馬のきん抜き(去勢すること)があっていました。

狂ったような馬の四肢を棒杭に縛りつけ、

獣医さんが素早くメスで切り裂き、手を真っ赤にして去勢をするのです。

痛いのでしょう、あちこちで馬のいななきが聞こえていたのを思い出します。

子供たちは近寄ると叱られるので、遠くから飽かずに眺めていたものです。

「日本モ 戦争ニ負クット 男ハミンナ アゲン キンバ抜カルルゲナ。エスカネヤー」と、

きん玉の縮みあがるような話をしておりました。

古老は昔からの農作業の移り変わりに詳しく、

汗みどろになって体験しているだけに、

話が微り入り細をうがって長々と継くのです。

「今ハ 牛馬ダン テンデ 見ランナヤ」

「自分カテ 飼ウテミラニャ ムゾゲモ ツカンバイ」「ソーソー」。

 

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