暮らしと方言の色揚げ

内山一兄・郷田敏男

 
 
 
 
 
 
 

麦播きのころ4


「ワタシゲニャ 手ノ揃トリマシタケン 田植エ麦播キャ 紙漉キバ止メテ

ソーヨ出マスモンバ 割合早ヨ シマヨリマシタ」

「ソリバッテ 田ン中打チャ ヤオアリマッセジャッタバノ」。

五人揃って田を打ったと言います。石灰をふった田圃を二本鍬・三本鍬で丹念に打ち返します。

ガバッと力まかせに打ち込んで、大きな土塊を起こします。

鍬の峰でポクンポクンと二、三回たたいて、塊を砕くのです。

長い畝は、気が遠くなるほど時間がかかります。

慣れないとすぐ掌に豆をつくったものです。


「初手ハ 何スッデン 手仕事バカッデノヤ。車力クサ アリマシタバッテ・・・。

ソリクサ跣足袋テロン 手ヌキデン アリマッセジャッタバノ。

足半(草履の一種)ヘーテ 何デン 素手デ 掌ダン

年中サンブ 筋ノ黒シテ 取レマッセジャッタタノ」。

家にあっては毎日紙漉きの水仕事、外に出ては素手で土肥をつかみ、

それこそ文字どおりささくれた手だったのです。


 田打ち塊割りがすみ、だんだん畝の形が整ってくると、

坪の隅に積み上げている土肥を運び、

前からほとばかし(ふやかす)ていた種麦も満石じょうけに入れてもってきます。


「後ニャ 転バケーテ 麦播ク道具テロン 麦踏ミノゴロゴロモ

出来ッキマシタバッテ 私ドンガコマカ時ャ

曲ゲ(杉板を曲げて作った楕円形の穀物すくい)ニ種麦バ入レテ 手デ播キョーリマシタ」。

 

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