暮らしと方言の色揚げ

内山一兄・郷田敏男

 
 
 
 
 
 
 

とーきんだご


三反百姓兼業の紙漉きわらでは、忙しさに取りまぎれて昔は火事が頻発しました。

いぐら家(瓦葺き屋根の家)の商家と違って麦殻葺きの屋根、

それに火を扱うことも多かったのです。

これにはほとほと困却して、もうこのうえは火神・水神に頼む外はないと、

神頼みの「とーきんだご」の行事が生まれてきたのです。


当日の夕食前、すぐった(藁の外皮をのぞいて整えた)新藁で苞を作り、

その中に餡をまぶした細長いだごを入れて軒先に下げておくのです。

二個だけは小盆に載せてげ(軒さき)の上に供げます。

頃合いを見て子供たちが仲間を呼び集めてくると、

一斉に「卜ーキンダゴ ゾーイゾーイ」とおらび立てます。

すると、そこの嫁さんが一・二個ずつ掌に分けてくれるのです。


「ソータイ。旨カダゴバ 遣ラス所ハ 大概知ットルケン

ソコニャ ダダ走ッデ 行キョーッタナヤ」

「旨ナカ所ントハ シブリカブリ 貰ヨッタタイ」

「手ノコボシデ貰テ 食ベキランナ旨ナカツァ コソーット ヤブンナケ ホシチョーッタナヤ」。

 

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