暮らしと方言の色揚げ

内山一兄・郷田敏男

 
 
 
 
 
 
 


お宮の世話もいよいよ大団円、座送りのときが最も賑わうのです。


「オドンガ コンチョカ時ャ 座チャ ホンニ 賑ヤヨッタナヤ」、

思わず「コンチョカ時」が飛び出します。

「講中デ コゲン賑アウコツァ アルメナイ。子供カラ年寄リマデ

ソーヨ 座元ニ押シ寄ッテ 朝カラヨサリマデ 三度三度 呼バリョーッタガ・・・」

「今ヨリ 講中ノ人数モ 多カッタモンナヤ」

「倍アル バエ。ソッデ 一日ニ 米半俵ダン 炊キョラシッロー 大釜サンデ・・・」。


まだ明けやらぬ朝のしじまを破って、太鼓の音が響き渡ります。

「それっ」と飛び起き家毎の朝食は抜きにして、座元に駆けつけます。

戸外にしつらえた大釜さんでは、すでに白飯が炊きあがっています。

白飯におつけとこんこん(たくあん)です。

朝から何杯もおかわりで、女衆はおかえ(食事の給仕)にてんてこ舞いです。

子供は、焦がれ(こがれ飯)に塩をまぶした握り飯をあてがわれて大喜びなのです。


「ホンナコッジャン。大釜サンデ 炊エタ飯ャ バサレ旨カッタモンナヤ」

「ソータイ。今ンゴツ 二、三合ドン 炊エタ飯ャ

食ワレン。マタ 今ンタ 焦ガレモ 出来ン」。


座の交替の日、送り方の昼食は格別賑わいます。

全員着座して、送り出す前の景気づけに移ります。

盃が飛び、大いにあおります。

果ては、歌や踊りのめごばれ(おしまい)騒ぎになります。

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