暮らしと方言の色揚げ

内山一兄・郷田敏男

 
 
 
 
 
 
 


これらの市はいわゆる雑貨の市で、正月目当ての日用品が多かったようです。

魚・苗木・陶器・農具・衣類など、

各種各様の品物を商う露店が中心街の通りの両側に並んだものです。

日ごろ日用品が不如意な山村僻地から陸続として客が繰り込み、

門前市をなして賑わったのです。品物が多いのに目を見張ります。

買いたい物の心積もりは数々ありますが、まずはゆっくり一巡してみるわけです。

目ぼしい店を見つけると、腰をおろしてじっくり交渉をはじめます。

算盤を弾いてしばらく駆け引きが続くのですが、結局大仰なしぐさで手打ちと相成るのです。

あれも欲しい、これも買いたいと、年に一回の大散財をするわけです。

求めた品物を長めごでいない、あるいは馬の背にうせて(牛馬に荷をつけて)

運んでいた往時の姿を、今でも思い出します。


戦時中は、物資不足から統制令が出て消滅しました。

戦後は、あちこちに闇市が乱立しましたが、

物資が豊かに出回ると自然と立ち消えになりました。


近在の人が市で久しぶりに出会って久闊を叙し、

飲み屋で一杯を傾ける交歓風景も見られたものです。

ほんとに心和む風景でありました。

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